【開発者】「ブロックチェーンを駆使してデジタルコンテンツに+αを」―町 浩二
2019.09.11
そう語るのはLondobell labs Pte. Ltd.のManaging directorである町浩二さんである。元々は自身が技術者として大手IT企業でシステム開発を行ってきた彼が、今度は経営者としてブロックチェーン技術を活かしたビジネスを行うべくシンガポールに来た背景を伺う中で経営者としての哲学を探る。
Londobell labs Pte. Ltd.のホームページはこちら。
https://londobelllabs.com/company/
ブロックチェーンを活用してインターネットの世界に“信頼性”を与える
□事業内容編
—事業内容を教えてください。
ブロックチェーンのシステム開発を行っています。ブロックチェーンというと、通常はトークンと呼ばれる「通貨系」のものと、「非トークン」の二つがありますが、私達の主軸は非トークンです。デジタルコンテンツの流通プラットフォームを去年日本で作成しましたが、それを今「デジタルコンテンツプラスα」の領域でブロックチェーンを安心・安全なインフラとして使えるように各企業向けに提案を行っています。
簡単に言うと、ブロックチェーンを活用してデジタルデータをセキュリティーの高い状態で売買したり、もしくは真正性、正しさを証明するようなプラットフォームを開発して企業向けに提供する、という活動をしています。
—具体的にはどういった電子データを扱うのでしょうか。
一つは、エンターテイメントです。カードやムービー、本といったものを発行して、誰が発行したものかを証明できるようにします。通常電子データというのは複製ができ、それによって「誰が作った」のかも「誰が所有しているのか」もわからない状態になってしまいますが、ブロックチェーン技術を使うことでまるで物理的な本のように「誰が作ったか」、Authorityをブロックチェーン上に作り上げます。
コンテンツの改竄ができない状態にし、一方で買った方は「誰が所有していて」、「誰が所有権を持っているか」、といった情報がブロックチェーンに書いてあるので、これにより電子コンテンツの所有が従来に比べて非常に明確なものになります。
通貨に“属性情報”を与えることで広がる可能性とは?
―「所有件を明確にする」といった以外にブロックチェーン技術を活かしたサービスはありますか。
それ以外には、例えば地域通貨や企業通貨を発行した際に「通貨自体に」意味を込めることが可能になります。あくまで架空ですが、例えばこの通貨は「アニメに関するものに使える通貨」といったような属性情報を持たせることが可能になります。他にも例えば「ある地域に行くとその通貨の価値が上がる」だとか、「ある企業の販売するものにとっては価値が高い」といったような情報を通貨自体にもたせることができます。
データを企業間で共有することで築くwin-winの可能性
その他でいうと、ブロックチェーンを活用することで「複数の事業体がデータを共有出来る状態」を実現することができます。例えば、ある会社がFacebookのようなユーザーを巻き込んだコミュニケーションアプリを持っており、ユーザーがある会社の製品サービスについてサービスを利用した経験や自分の情報を色々と書き込んでいく仕組みがすでにあったとします。その書き込み情報を例えば学術系の研究機関等に提供して彼らがその情報を分析して研究結果を情報提供側に返す形で発表するとします。
こうすることで企業が自分の顧客の方にはリッチなシステムUIでサービスを提供し、一方でコストをかけずに学術研究の結果を得られるようになります。参加する機関の母体を大きくしていき、プラットフォームを運営している企業が他の会社に情報を販売する、といった収益化の仕組みも実現可能です。実際にそれを面白いと言ってくれている企業も既にいます。
—エンタメの領域で同じく「データの信頼性の向上」によりどのようなメリットを享受できるのでしょうか。
基本的には今の日本国内に限って言えば大きな利益を得られる人は見当たりません。というのも、例えば音楽であればJASRAC等の努力によって版権管理が実現されているので、今以上に信頼性を向上させる必然性がそこまで高いわけではないです。
ただ、例えば「海外に販売する」となった時には大きなメリットを感じる人が増えるのではないかと考えています。ブロックチェーンを利用したアジア共通の版権管理基盤が作れれば、もっとスマートに映像、コンテンツの輸出ができるんじゃないかと考えています。
エコシステムを提供するブロックチェーンはシンガポールと相性がいい
□シンガポール進出編
—シンガポール進出の理由をお聞かせください。
事業を始めたばかりの頃はトークンの販売をしようと考えていたのが始まりで、シンガポールか香港か悩みました。最終的にシンガポールを選択したのは、香港は「中国政治のリスクが強そう」だと考えたのが大きな理由です。突然、政府の規制などが理由で取引ができなくなるといったリスクが比較的強い地域は極力避けたかったからです。
また、アジア圏だと「シンガポールが一番ブロックチェーン、特にトークンの規制ルールを具体的に政府が出している」というのと、私が昔旅行でシンガポールに来たことがあって「単純に好きだった」、というのが初期の理由です。
ただ、現在はトークンのセールスは辞め、ブロックチェーンを使った事業に注力していますが、それでもあえてシンガポールで事業を進めるメリットは十分にあると考えています。
ブロックチェーンというのは基本的には小さいサービスではなくエコシステムといった大きな仕組みを作る上で価値が出るシステムです。つまり複数の会社をまたいで進めるような事業でこそブロックチェーンの価値が出る仕組みなので、そういう意味で日本国内でのみ事業を展開すること自体リスクになりうると考え、アジアの動きを把握しておく必要があると思うようになりました。
ハブになっているシンガポールはマレーシアやインドネシアといったアジア周辺諸国で、私達のやろうとしているビジネスモデルが通用するか探るという面で重要な位置にあり、市場が活発なこの国は先進事例を求めるのに適していると考え事業をスタートすることに決めました。
会計事務所と法律事務所の連携が進むと利用者は助かる
□会計事務所編
—最後に、ずばり会計事務所に求めるものはありますか。
弁護士事務所と連携したパッケージ等があると助かると、実際に会社を立ち上げた私からすると思うことがあります。例えば、増資やストックオプションをする際に、弁護士の方に正式な文書を依頼しますよね。私のように個人で会社を運営している人からすると会計や法律などの専門領域の境界線がわからないことが非常に多く、例えば「増資セット」といったような会計面と法律面で業務の内容を一手に引き受けてくれるようなサービスがあれば楽でいいなあと感じることがあります。
—なるほど、legal matterに関する依頼も会計事務所と法律事務所が合同してサービス提供するシステムがあると非常に助かるということですね。実際にビジネスをされている方の目線の貴重なご意見、どうもありがとうございました。
ブロックチェーン技術を活かして主に法人に向けた様々なサービスを展開しようとしているLondobell labs Pte. Ltd.社にご興味を持たれた方はぜひこちらのホームページにお立ち寄りください。https://londobelllabs.com/company/