【パン屋】提案型のパンにより対話が生まれる – 前幸地夫妻
2019.08.21
2019年4月、シンガポールのUEスクエアーにオープンしてから瞬く間に日本人を中心に人気を集めているベーカリー。ご主人はかつてフレンチレストラン Joël Robuchon(六本木とシンガポール)と béni (Mandarin Gallary)でパンのシェフを務めた、名実ともに備わったパン職人。ご主人と奥さんで切り盛りする『Fine Dining Bakery』のパンを求めて毎朝行列ができるという。
シンガポールの会計事務所『CPAコンシェルジュ』のスタッフ内にもファンが多く、早い日では昼の12時ごろに目玉商品の一つである「生食パン‘Fluffy Shokupan’」が売り切れるほど人気爆発中のFine Dining Bakeryに人気の秘訣を取材してきました。
シンガポールであえて「ハード系パン」の販売に特化した2つの理由
―事業内容を教えてください。
パンの販売、カフェです。
―シンガポールに既にたくさんのパン屋がある中で、『Fine Dining Bakery』のコンセプト、強みは何ですか。
『Fine Dining Bakery』では、ハード系のパン(バケットやフランスパンといった、食事を引き立てるパン)を中心に販売しています。私は元々シンガポールの” Joël Robuchon”と” béni”というレストランで、食事に合わせた、食事を引き立てるためのパンを作ってきました。今シンガポールに多いもの、流行っているものは柔らかいパン、お総菜パンが多いんですね。そのような環境にあるので、私の得意とするハード系のパンはすごく強みになります。これが一つ目の理由です。
また、シンガポールの食文化を見たときに、日本の流行がシンガポールに遅れてきているという印象を受けたんです。日本では今やあちこちでハード系のパン屋を見かけることができると思うんですが、そう考えたときに、シンガポールでもハード系のパンが流行ってもおかしくないと感じました。これがハード系のパンで勝負しようと踏み切った二つ目の理由です。
パンの素人でも思わず興味を引く「提案型のパン」とは
―シンガポール人の人々にハード型のパンは受け入れられそうですか?
ローカルの方はまだハード系のパンにそこまで慣れていないという現状があります。ですので、私たちのパンを見ていただくとわかる通り、食パン一つとっても「そのまま食べるタイプ」と、「トースト用」と表示したり、バケットでも「赤ワイン用のパン」とか「白ワイン用のパン」とか、そういったように「提案型」の形態をとって販売するように工夫しています。
(↑「for RED WINE」「for WHITE WHINE」と表記することで、お客様に食事の組み合わせを提案している)
専門的な名称などをあえて避けることで、全くパンについて分からない人でも「なんでマイルドとストロングがあるの」とか、「なんでこれは白ワインより赤ワインに合うの?」といった会話が生まれ、最終的にお客様にとってベストなパンを購入していただけるようになっています。
―素人のお客さんにとっても非常に分かりやすく購入の際に参考になりますね。思わずいろいろ聞いてみたくなりそうです!
話題の生食パン食べてみた!砂糖の代わりにはちみつを使う理由
―「生食パン」と「トースト用食パン」の決定的な違いはなんですか。
焼かずに食べる「生食パン」の方は、砂糖の代わりに生クリームやはちみつを入れて、しっとりと味わい深く焼き上げたものになります。こうすることで「しっとり感」が増して、食べたときに上品な甘みが強く出るんです。
一方でトースト用は、パンの生地を折りたたむ工程があるのですが、その工程を増やすことでパン生地の中にエアーを作っています。これによって焼いた後にボリュームが出て、トーストした時にすごく柔らかく仕上がるようにしているんです。「皮がパリ」っとなって「中がふわっと食べられる」ように作っているのがうちのトースト用食パンの特徴です。
―「パンは焼いた方がうまい」と頑なだった私ですが、生食パンを一口食べるや否や「このパンの魅力を最大限に生かした食べ方は“焼かずにそのまま食べることだ”」と瞬時に悟りました。パンの性質を知り尽くしたご主人だからこそ実現したパンです。
今後の目標は「特定のメニューに特化したパン屋」を展開していくこと
―今後の目標について聞かせてください。
店舗展開を視野に入れて、「サンドイッチの専門店」といったように、特定のメニューに特化したパン屋を作りたいと考えています。パンはいろいろなアレンジが可能なので、ローカルの好みや親しみやすさなどもリサーチしながら考えていこうと思っています。
―最後に、会計事務所に求めることを教えてください。
私たちはビジネス、経営に関しては初心者です。たくさんわからないことがありますし、そもそも何をしていいかわからないこともあったりと、オープンしてからまさに四苦八苦しながらやっているという状態です。シンガポールという土地で、自分で仕事をして初めて気づくようなわからないことに出会う度に「どうしたらいいんだろう」と感じることが本当に多いです。そういったときに、会計面だけでなく「シンガポールのプロとして」アドバイスをもらえるような存在であると助かると日々感じています。
以上、シンガポールで話題沸騰中のパン屋『Fine Dining Bakery』の前幸地夫妻のインタビューでした。こちらの記事を読んで当店一番人気の「生食パン‘Fluffy Shokupan’」にご興味が湧かれた方は、ぜひ実際にパンの魅力を「提案されに」訪れてみてはいかがでしょうか。