居住性の判定と出国税
2015.02.06
日本の税金や国際税務など
今朝の日経新聞にも掲載されていましたが、昨日、「所得二十数億円申告漏れ=接着剤スリーボンド元会長」というニュースがありました。
簡単にいうと、日本に住んでいないと主張し日本で所得税を納めていなかったが、国税庁から「いやいや、あなた日本に住んでいるでしょ。日本で所得税払ってよ。」と指摘され、過去の所得税とともにペナルティも支払った、という話です。
税務上、「どこの国に住んでいるか(居住性の判定とかいいます)」というのは、それによって税金の取り扱いが大きく異なるものの、判定が非常に難しい問題です。通常は、その人の職業や家族の居所、事業の内容などによって総合的に判定されますが、なかでも判定要素として強いのが、「滞在日数」です。183日基準(1年の半分超)とも言われます。
今回の記事によると、「国税局が調査した結果、日本に1年の半分以上滞在していたことが判明」とありますが、滞在日数が判定要素として強いというのは、一般的に知られていることであり、特に富裕層の方々の中では誰でも知っていると言っても過言ではない話です。
ですので、今回のスリーボンド元会長は日数計算を間違っていたのではないかと思います(具体的な予想は伏せます)。本件で詳細を御存じの方は是非教えてください。
この居住性の判定の話、今年の7月から出国税という新たな制度が導入されますので非常にホットなトピックです。「日本に住んでいる人」が2015年7月以降に海外移住すると、移住時点で保有している株の金額が大きい場合には移住時点で株を売ったと仮定して所得税を納めなければならないことになります。未上場株も対象になる予定で、例えば親の代から代々やってきた稼業を継いだ2代目オーナー社長が海外展開を進めるために海外移住する場合も、株を売ってもないのにもかかわらず移住時点で多額の税金を納めなければならないことになります。上場会社以外も全ての会社が対象の予定です。
ですので、「日本に住んでいる人」なのか「海外に住んでいる人」なのかの判定は非常ーーーーに重要です。ちょっとしつこいですが、もともと「海外に住んでいる人」であれば対象にならないところ、もともと「日本に住んでいる人」が海外移住すると、(保有している株式が多額の場合)移住するだけで多額の税金を納めなければならないためです。
そういう背景もありまして、まことしやかに海外移住ラッシュが進行していると言われてます。