有限責任事業組合(LLP)(会社設立、法人設立)
2015.11.14
会社設立(法人設立)などシンガポール進出系
最近、たまたまだと思うんですがLLP(Limited Liability Partnership)に関するご相談が多いのでLLPについて整理しておきます。
このあたり シンガポールの事業体の種類
にさらっと書いていますが、LLPは2名以上(人数上限なし)の有限責任からなるパートナーシップで、パートナーとは別個の法人格を有する事業体です。個人のみならず会社もパートナーになることができますが、他のパートナシップと異なり、LLPに無限責任パートナーはいません。全てのパートナーが日本などの外国居住者(社)であっても構いませんが、一人以上のシンガポール居住の自然人をLocal Managerとしなければなりません。
パートナーは有限責任だし、別個の法人格を持つし、会社もパートナーになれるし、そういう意味では、通常の株式会社とほとんど同じといってもいいかもしれませんが、通常の株式会社に比べて各種コンプラ義務は緩くなっています(全員が有限責任の分、他のパートナーシップよりは厳しい)。例えば定時株主総会の開催義務や、カンパニーセクレタリーの設置義務、増資の登記義務などはなく、年に一回の財務状況の健全性に関する宣誓書の提出が求められている程度です。
ここで、「コンプラ義務が通常の株式会社に比べて緩くなってるなら維持コストが安いよね」と思うかもしれませんが、我々のような業者コストが安いかどうかとはちょっと違うかもしれません。LLPはPTE LTDなどと違い一般的な事業体ではないので、そもそも扱っている業者が少ないというのと、我々業者側も逐一LLPではどうなっているのかを調べなくてはならなかったりと工数がかかってむしろ高くつく、ということもあると思いますので注意が必要です。
専門用語でいうところのいわゆるパススルー事業体なので法人税は課税されず、それぞれのパートナーがそれぞれの分配金額(支払いを伴うDistributionではなく計算上のAllocationの概念)に応じて個人の所得税が課税されます。なので、税務上はパートナーが全員個人事業をやっているのと似たような考え方になります。
「パートナーそれぞれが実際に事業を行うが、個人事業の集合体としての名称を名乗れる」というものだと思えばよいでしょうか。LLP利益の分配割合などを別途定めて出資割合以外の割合でパートナーに分配することもできるという意味では、優先出資などの種類株の株主を持つ通常の株式会社にとても近いような気がします。個人事業の集合体なので、一般的には法律事務所や会計事務所など専門家団体に使われることが多いです。