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経営者インタビューINTERVIEW

経営者インタビュー

【アートギャラリー】アーティストが死んでも人に影響を与えられる芸術は人間の活動として究極 – COCO Gallery 工藤 桃李

2019.08.07

編集

そう語るのは若干23歳にしてシンガポールにアートギャラリーの設計を試みる工藤桃李さんである。アートギャラリーの開催者と聞くと根っからの芸術っ子を想像するが、彼の大学・大学院での専門を聞いてみると意外にも生物学だそうである。一見アートとは関係ないバックグラウンドを持つように見える彼がアートギャラリーを開こうと思いたったのにはどんな経緯があったのか、またシンガポール進出の理由を探るべく突撃取材してきました。工藤 桃李さんのインスタアカウントがこちら

 

「アーティストを育てるアートギャラリー」はどこで利益を出す?

―事業内容を教えてください。

アートギャラリーです。特に現代アートを中心に扱うギャラリーになっています。

 

―入場料をとらないのが通常だと思うのですが、アートギャラリーというのはどこで利益を出すビジネスモデルになるのでしょうか。

基本的には作家さんやアートギャラリーから作品を仕入れてお客さんに売る中で、仲介料といった形で手数料をいただいて利益を出していくモデルになります。アートギャラリーによっては個展をやるときの貸出料や、作品を保管しておく費用としてお金を頂いている場合もあります。

ただ、COCO Galleryの場合はコンセプトを「アーティストさんたちを応援する」としているので、基本的に賃料等を頂く事は無いです。また、売れた時の手数料についても多くは取らないようにしています。まだ作品が売れにくいアーティストさんが手数料をたくさん取られてしまうと、生活していくのすら難しくなる。それじゃアーティストさんが育っていくわけがない。ですので、アーティストさんのプロモート費用などを考えつつ、値段や手数料はアーティストさんとよく相談して決めています。

 

―アーティストに寄り添ったギャラリーですね。アートギャラリーを始めようとしたきっかけはどういったものだったのでしょうか。

ギャラリーの運営はパートナーと行っているのですが、僕もパートナーも元々アートが好きで、買い集めるうちにだんだんと置き場所がなくなってきてしまいまして笑。自分で楽しむのも良いのですが、作品に多くの人の目に触れて欲しいという思いもあり、ギャラリーを作ってしまおうというのが始まりです。その後、色々とアートに触れていく中でアーティストさんを応援していきたいという気持ちが湧き上がってきて、「アーティストさんの活動の応援」というコンセプトになりました。

 

―取り扱っていくアートというのは具体的には?

現代アートであればなんでも扱おうと考えていますが、中心になるのは絵画です。後は切り絵や、立体だと焼き物も扱っていますね。

 

シンガポールというのは国の“信頼性が高い”からブランドになる

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―アートギャラリーはシンガポール以外にも展開していく予定はありますか。

はい、将来的にはリスボンにも作ろうと考えています。拠点はシンガポールにしようと考えていますが、世界中の色々なところに作っていこうと考えています。ギャラリー間で作品の移動を行うことで、国をまたいでギャラリーを持つことによる相乗効果も期待しています。その上でシンガポール選んだのはやっぱり資産家さんが多いことに加えて、シンガポールという場所は国としての信頼性高いので、ブランドになると考えてこの国を選びました。

 

アートを好きになったきっかけは”アーティストさん”自身への興味

―アートが好きになったきっかけを教えてください。

自分の場合は、アートよりも先にアーティストさんへの興味がありました。アーティストの方って、ピュアでいながら良い意味ですごく尖っている方が多くて。知れば知るほど面白いというか、興味が尽きないんです。そんな方たちが作っている作品はどんなものなんだろうと気になって様々な作品に触れている内に、アートそのものが好きになっていました。

とても恵まれていると感じるのですが、ギャラリーを営んでいるお陰でアーティストさんとコミュニケーションを取れる機会が多いので、作品にどんな想いが込もっているのかを直接聞くことができます。そうすると、ただ観るだけよりも何倍もアートを楽しめるんですよね。アートに触れて、アーティストさんの想いに触れて、一生飽きないだろうなと思います。

 

リスボンの飲食店くらい、アートの存在を身近にしたい

―今後の会社の目標プランはなんでしょう。

日本のアート市場って、GDPと比べたときに凄く小さいんですよね。そもそも日本人にアートを購入するという文化がなくて、特に自分の年代のような「若い層がアートをもっと身近に感じられるような環境にしたい」というのが究極的な目標です。

というのも、最近リスボンに初めて行ったのですが、人々の生活にアートが浸透していたのが自分にとって非常に衝撃的だったんです。ポルトガルは元々マイナス経済が続いていた状態から最近になってプラスに回復してきたという国なので、そこまでアートを購入する経済的な余裕などはないだろうと予想していたのですが、実際は全くの逆で。どこの食堂に行っても絶対にアートが飾ってありました。そんなリスボンくらいアートの存在が身近になることが目標です。

 

―そういえばCPAコンシェルジュの会議室もアートと呼べるものが全くなくて殺風景ですしね笑。最終的なビジョンを達成するための具体的なステップとして今はどんなことをやっていますか。

日本での活動になりますが、定期的にアートパーティーを開催しています。資産家の方が集まる敷居の高いものではなく、誰でもラフに足を運べて、いろんなアート作品を楽しんだりアーティストさんとコミュニケーションを取れたりというような場ですね。他には近場の飲食店に作品を置かせて頂いたりと、多ジャンルの業種の方とのコラボを行ったりしていますね。まだまだ課題も多いですが、目標に向けて試行錯誤を重ねています。

 

「自分の好き」を見つけるのがアートと親しむうえで一番大事

―アートの作家さんは具体的にどのように探すのでしょうか?

アートフェアや人からの紹介、SNS、アートギャラリー等ですね。なにより生で見るのが大事だと日々感じています。写真と生では表情が全然変わるんですよね。さっきお話した切り絵も実は白と黒という風に2つの層からなっていて、近くで見るとより立体感が感じられるんですよね。やはりそういった写真では伝わらないような要素はたくさんあります。

そういう意味でも各地にギャラリーを置くというのは、「この作品が見たいから他の国から持ってきて」という要望にも対応できるとい点で強みだと思っています。

 

―作品を見る目はどうやって養いましたか?

自分もアートに触れて日が浅いので、目が肥えているとは思ってないですが、まずは自分が好きな作品を見つけることが大事かなと思います。投資的な価値でアートを見る上ではある程度知識が必要になるのは事実ですが、その目線だけでは「作品」ではなく「商品」という形で目に映るようになってしまうかなと。それではつまらないと自分は感じますし、興味も続かない。

それよりも、自分の好きな作品を見つけて、もっと他の作品も観たいと思えれば、多くの作品に触れていく中で自然と目も養われていくかなと。ですので、「自分の好きを見つける」というのが1番重要なことだと思っています。

 

「研究にエネルギーを注げない研究者」を目の当たりにしたのが

「誰かを応援したい」と思ったきっかけだった

―最後に伝えたい事があればよろしくお願いします!

自分個人の話になるのですが。アートと少し話がそれますが、まず僕は”研究者を応援する基金”を作りたいと考えています。大学・大学院と在籍していて、大学院は中退しましたが、在学中は研究者が資金を集めてくるのにかけるエネルギーがすごく無駄だなと感じていました。資金集めにエネルギーを使ってしまい、研究に十分なエネルギーを注げない。しかも、それだけ資金集めを頑張っても資金が十分ではないという研究者が多くいるという現実を目の当たりにしてきました。言うまでもなく研究者の本業は研究であるべきで、そのロスがすごくもったいないなと思っていて。そこで、研究者に対して国の代わりにどんどんと助成金を出していく活動をしたいと考えるようになり、基金という目標ができました。

次の目標が、「アーティストを応援する」というものです。音楽や絵画をはじめ、芸術作品って、生み出されてから数十年、数百年と経っても人々に影響を与え続けていますよね。それって人の活動として究極だと思っています。そんなアートを通して人の心を豊かにできればと思い、アーティストさんの応援をしたいと考えるようになりました。

「研究」は生活の、「アート」は心の豊かさ、ひいては人の幸福につながる、非常に素晴らしいことだと思います。ただ、どちらも自分はプレイヤーになるにはあまり向いていないなと笑。ですので、研究者とアーティストを応援することを通して、人々の幸福に貢献していければと思います。

 

大学時代の経験から感じた「誰かを応援したい」という気持ちからアートギャラリーを開くに至った工藤桃李さんのインスタアカウントがこちらになりますので、今回のインタビュー記事を読んで「シンガポールのアートギャラリー」に興味を持ったという方はぜひお立ち寄りください。

https://www.instagram.com/gallery___coco/?igshid=ph808g5v2f08

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