タピオカミルクティーの原価はいくら?会計専攻でタピオカマニアの私が徹底検証してみた
2019.07.22
インターンブログ
シンガポールはタピオカ天国!?
こんにちは、シンガポールの会計事務所でインターンを始めて早1ヶ月が経ちました、yukiです。
今回は私が愛してやまない「タピオカミルクティー」についてです。
インターンを始めてから改めて気づいたのですが、台湾や中国などのブランドが出店をしたり、シンガポール発のブランドまでできたりと、ここシンガポールでは日に日にタピオカ人気が若い女性を中心に急上昇しています。実際ランチタイムに出かけると、タピオカショップは長蛇の列で、街中にはタピオカを手にしている方が多くいます。デリバリーで提供するお店もあり、タピオカショップの勢力は拡大していく一方です。
多くの人が、愛情とお金をかけて作っているタピオカミルクティーですが、
「1杯いくらで作れるのか」
「利益率はどのくらいなのか」
会計専攻でシンガポールの会計事務所でインターン中の、そしてタピオカ大好きな私が徹底的に分析していきます!
タピオカミルクティーの1杯あたりの原価を徹底計算してみた
それでは、早速「タピオカミルクティー」1杯あたりのコストを追求するべく、「原価計算」していきます。原価計算というのはその名の通り「原価」の計算なのですが、原価を求める際、一般的には以下の3つの要素に分解して考えていきます。
・労務費
・製造経費
本記事でもこの3つの要素はそれぞれいくらかかるのか、という観点で計算していきます。
今回は私の大好きなタピオカブランドを対象にして分析をしていきたいと思います。
【タピオカブランド情報】
価格:3~7 SGD
推しメニュー:アボカドミスク
場所:シンガポールの中心地、Funan モールのテナント
タピオカミルクティーの1ヶ月当たりの売上数は何杯??
さて、タピオカミルクティー1杯あたりの各要素の計算に入る前に、一店舗当たりの1ヶ月当たりの売上杯数を整理しておきます。
お客さんが購入までにかかる時間を考える必要がありますが、私が普段ピークタイムであろうランチタイムに買いに行く際は10分程度並びます。一方で夕方の空いてる時間帯に行くと並ばずにすぐ買えることもありますので、1日の平均的な購入までにかかる一人当たりの時間を「2.5分」程度と仮定します。また、顧客一人あたり、「1.2杯」買うと仮定しましょう。
営業時間が10am~10pmですが、実際に売上が立つのは、開店直後と閉店前の30分ずつを除く11時間とします。
ちなみに某有名コーヒーショップの一日当たり売上数が約390杯であることに鑑みると、この数字はあながち外れている数字ではないでしょう。
材料費 (Material Cost)
それでは「材料費」の計算をしていきます。タピオカミルクティーに必要な材料は、「飲料部分」である
・タピオカ
・砂糖
そしてそれ以外の
・ストロー
・フタのシール
・レジ袋
です。
今回はあるホールセール向けのウェブサイトからタピオカミルクティーのための材料を一式揃えるのにかかる費用を参考に分析をしていきます。大量に購入すれば1杯あたりの費用を抑えることができますが、在庫が増えるとそのための管理費用もかかってしまうため、現実的な量を想定して計算していきます。
ちなみにタピオカ特有のシール状の蓋ですが、密封性が高いだけでなく従来のプラスチックのフタよりも安いのがその特徴です。
実は「タピオカ」ではなく「ミルクティー」が重要だった!?
紅茶に関しては、ブランドごとにそれぞれこだわりがあります。例えば有機の紅茶を使っていたり、産地直送の紅茶を使っていたり、といった具合です。
タピオカミルクティーを製造する際どうしてもタピオカに目が行きがちかと思いますが、実はミルクティーにこだわっているブランドがリピーターを多く獲得しているように見えます。なぜなら、タピオカ自体はほのかな甘さしかないので製品全体に与える影響は少ない一方で、ミルクティーが水っぽく薄いものでは、非常に購入者にとって物足りない印象を与えてしまうからです。
あくまでもタピオカ好き女子の私の意見ですが、ミルクが濃厚で、紅茶の香りが強いミルクティーほどタピオカとの相性がいいです。
計算結果は以下のようになりました。
【材料】 | 全体 | 1杯あたり | |
◆タピオカ | 60SGD/18kg | 0.2SGD (1杯60g) | |
◆ミルクティー | 紅茶 | 22SGD/500g | 0.44SGD(1杯10g) |
ミルク | 11SGD/5L | 0.40SGD(1杯180ml) | |
◆砂糖 | 60SGD/20kg | 0.03SGD(1杯10g) | |
◇カップ | 15SGD/1,000個 | 0.015SGD | |
◇ストロー | 60SGD/5,000本 | 0.012SGD | |
◇フタ | 52SGD/3,000枚 | 0.017SGD | |
◇レジ袋 | 12SGD/1,000 | 0.012SGD | |
合計 | 1.126SGD |
従って1杯当たりの材料費は
1.126SGD/1杯
と求められました。
労務費 (Labor Cost)
原価の三大要素の2つ目は「労務費」です。某コーヒーショップのように何人も人員を配置し、ベルトコンベア方式で作っていく方法もありますが、一般的なシンガポールのタピオカショップは1~2人でお店を回しているようです。
ちなみにその店舗の給与は募集要項を確認したところ、週5日フルタイム8時間で、1,800SGD/月でした。スタッフの人数は
・1日最低2人
と推定しましょう。
【考察】タピオカミルクティーを少ない人員で回す2つの理由
さて、タピオカミルクティーのスタッフ一人当たりの作業を観察するとわかりますが、基本的にレジで注文を受け、ドリンクを作るところまで請け負っています。長蛇の列ができていることもあるので、一見効率が悪いようにも見えますが、これには理由があるようです。
一つ目は「人件費削減」というのが大きな要因です。
ただ、タピオカマニアの私からすると個人的に思いあたる理由がもう一つあります。それは、「作り置きがしにくい」というタピオカの性質に理由があると考えます。タピオカを実際に茹でて家でも楽しむほどライフスタイルがタピオカに侵されている私だから気づいたのですが、タピオカって茹でるのに非常に時間がかかるんですよね。時間にして約40~50分ほどかかります。さらに厄介なことに、長時間かけて茹で上げたそのタピオカも長期間放置していると固くなってしまいます。
「茹でるのに時間がかかる」
「放置すると硬くなる」
という厄介な性質をタピオカは持っているんですね。
上記の原材料の性質から、
と考えられます。
人件費は1,800SGD×5人÷9,600杯で、
0.9375SGD/1杯
ですね。
製造経費 (Other Costs)
さて、原価を閉める3つの要素のうちの一番最後である「製造経費」について考えていきましょう。
製造経費は簡単に言うと「直接費」にも「労務費」にも含まれない費用です。今回は以下の二つを考えていきます。
・水道光熱費
◇家賃
最も大きな製造経費と言えるのが「家賃」です。テナントのお店にとってはこの家賃が一番大きな製造費用だと思われますが、こちら直接ショッピングモールのサイトを調べたところ、テナントレンタル代が「8,000SGD/月」でした。こちらは50平方メートルあたりの価格らしく、今回モデルとして取り上げているタピオカショップはもう少し小さそうなので、
また、機械設備の減価償却費があるとしたら、タピオカの蓋のシールを接着する機械くらいでしょうか。(機械の購入費用をその使用期間にわたって分配することを減価償却と言います)しかし、シールを熱で溶かして接着するだけの機械なので故障も考えにくいですし、期間は長く使えそうですね。それに1店舗に1台あれば十分なのでそれほど大きな額にはならなそうなので、今回は無視します。
また店舗によっては、ミルクティーと氷を混ぜるためのシェイカー用の機械がありますが、これは、大きな店舗に見られるもので、私の調査した店舗にはありませんでした。
◇水道光熱費
次に「水道光熱費」や「電気代」です。ここではタピオカを何回に分けて茹でるのかが問題になってきます。
自称タピオカ女子である私の経験上、タピオカはまとめて茹でると、煮詰まってしまい鍋の底で溶けてくっついてしまいます。さらに先ほど述べた理由から作り置きができないので、何回かに分けて茹でているはずです。
また氷については水道費に含めます。今回はシンガポールの一般家庭の水道光熱費の平均より少し上回る180SGD/月と推定します。
1杯当たりの費用は6,000SGD+180SGD÷9,600で
0.64375SGD/1杯
ということになります。
【結論】タピオカミルクティー1杯あたりの利益率は○○%!
さて、原価の三大要素である「直接費」「労務費」「製造経費」の1杯当たりの値段が求まりましたので、それらを合算してタピオカミルクティー1杯辺りの原価を計算していきます。
1杯あたり | ||
直接費 | 1.126SGD | |
労務費 | 0.9375SGD | |
製造経費 | 0.64375SGD | |
合計 | 2.70725SGD |
よって、1杯あたりのタピオカミルクティーの原価は、材料費、労務費、製造経費を合計し、2.70725SGDということがわかりました。1杯あたり4SGDのタピオカミルクティーに対する利益は、約1.3SGDということになります。つまり1杯辺りの利益率は32%ということが分かりました。
ちなみに一般的な飲食店の利益率が10~15%です。この数字と比べると、タピオカミルクティーの利益率は高いことが伺えます。
【結論】タピオカミルクティーは儲かる!
材料費だけでなく、労務費や製造経費を考慮しても利益率の高いタピオカミルクティー。流行し始めてからしばらく時が立っているにもも関わらず、大手ブランドが支店を増やすことをやめないのも頷けますね。
また、これまでタピオカミルクティーの主役をタピオカだと考えていた人が多いかもしれません。
しかし、今回お話しした理由から原材料だけを考えると、ミルクティーの方がコストが高いこともあることがわかっていただけたかと思います。「タピオカ増量無料」というよく見かけるキャンペーンの裏には、そのようなからくりがあるのかもしれませんね。
また、今回モデルケースとして取り上げたタピオカミルクティーの店舗があるFunanモールがオープンした初日に、インターン生3人で突撃した様子についてこちらの記事でご紹介していますので、シンガポールを代表するショッピングモールにご興味がある方はぜひ、こちらも合わせてご覧ください!