シンガポール税制の全体像|法人税・個人所得税・GSTの要点
最終更新日:2026年10月14日
公認会計士 萱場 玄
シンガポールの税金は、仕組みがシンプルで税率が低いのが特徴といえます。この記事では、法人税、個人所得税、GSTの要点を1ページにまとめます。詳しくは各項目のリンク先をご覧ください。
3つの特徴
- 国税のみ:住民税や事業税のような地方税はありません。
- 賦課課税方式:納税者が申告するのは課税所得のみで、納税者が所得を課税所得を申告した後に、IRAS(内国歳入庁)が税額を確定し、課税通知(NOA)で知らせます。自分で税額を確定させる日本の申告納税方式とは異なります。
- 低い税率と優遇税制:政策的に低い税率と大胆な優遇を打ち出す一方、透明性も確保しています。税務情報の交換に関する国際審査では、2018年に最上位の「適合」と評価されました。
主な税目の申告納付スケジュール
| 税目 | 税率 | 申告 | 納付 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 17%。部分免税と新設法人向けの免税により、実質的に累進税率に近い形 | 見積申告は決算日から3か月以内。確定申告は決算日の翌年の11月30日まで | IRASの課税通知に基づいて納付 |
| 個人所得税 | 累進税率。最高24% | 翌年4月15日まで。電子申告は4月18日まで | 課税通知から30日以内。口座引き落としなら分割払いも可 |
| GST | 9% | 原則として四半期ごと。課税期間の終了から1か月以内 | 申告期限と同日。口座引き落としなら期限の翌月15日 |
法人税の要点
- 税率と免税:税率は17%です。ほぼ全てのシンガポールでは、部分免税により、課税所得の最初のS$10,000の75%と、次のS$190,000の50%が免税になります。一定の要件を満たす新設法人は、最初の3賦課年度に限り、最初のS$100,000の75%と、次のS$100,000の50%が免税になります。
- 課税の範囲:シンガポール国内で生じた所得と、国外で生じた所得のうちシンガポールで受け取ったものが課税対象となります。
- 居住法人:経営と管理がシンガポールで行われている法人は居住法人とされます。新設法人向けの免税、国外源泉所得の免税、租税条約による源泉税の減免、外国税額控除を使えるのは居住法人だけとされています。
- 賦課年度(YA):申告する年で年度を呼びます。2026年中に決算日を迎える事業年度の申告はYA2027と呼ばれます。
- キャピタルゲイン:資本取引にあたる売却益は非課税です。ただし、同じ資産の売却でも、資本取引ではなく損益取引と判定されれば課税されます。
- 交際費:一定の条件のもと、全額を損金として処理することが可能です。
- 申告:見積申告(ECI)は、年間売上がS$5 million以下で、かつ見積課税所得がゼロの場合は免除が可能です。確定申告の様式は、会社の規模等に応じてForm CとForm C-Sなどの様式に分かれます。
個人所得税の要点
- 計算式:(総所得 − 所得控除)× 税率 − 税額控除。税率と算定方法は個別記事をご覧ください。
- 総所得に含まれるもの:給与や賞与のほか、会社から提供される住居や車などの現物給与も含まれます。
- 源泉徴収と年末調整がない:会社は、年間の給与額をまとめたIR8Aを翌年3月1日までに従業員へ交付するか、AISという仕組みでIRASへ直接提出します。個人所得税の確定申告は従業員が自分で行います。
- 暦年課税:2026年1月から12月の所得は、2027年に申告します。法人税と同じく、この場合の賦課年度をYA2027と呼びます。申告と納税のスケジュールは個別記事にまとめています。
- 退職と国外異動:外国人従業員が退職または国外へ異動する際は、会社が所得税の精算申告(IR21)を行います。
GSTの要点
- 日本の消費税と同様に、預かった税額から支払った税額を控除した金額を納税する間接税の一種で、標準税率は9%です。
- 登録制:GST登録をした事業者だけが、請求にGSTを上乗せします。登録していない事業者は上乗せできません。この点が日本の消費税との大きな違いといえます。
- 登録義務:暦年の課税売上がS$1 millionを超えた場合と、今後12か月で超えることが確実に見込まれる場合に、登録が義務になります。任意で登録することもでき、その場合は少なくとも2年間、登録事業者であり続けることとなります。
- 申告:原則として四半期ごとに申告を行います。
優遇税制
シンガポールは、特定の業種や事業に対して多くの優遇税制を設けています。対象は、先進的な事業、国際的な海運、国際貿易、地域統括、金融などです。内容は軽減税率にとどまらず、損金の割増計上など多岐にわたります。多くは大企業向け、監督官庁との交渉と承認が必要で、制度ごとに所管の官庁が異なります。
税務調査
税務調査は、書面や電話、メールでの照会が中心で、特に中小企業への実地調査は多くありません。IRASが追加で課税できる期間は、法人税と個人所得税が賦課年度(YA)の終了から4年、GSTが課税期間の終了から5年とされていますが、不正や脱税がある場合はこの限りではありません。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。
弊社では、シンガポール法人の法人税見積り申告・確定申告、GST登録・申告をサポートしています。税務手続きについてのご相談は、お問い合わせください。