MOMによるウォッチリスト(Watch list)
最終更新日:2026年10月6日
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
もともと国民の人口が少なく、出生率も低いシンガポールでは、全居住者の約3分の1が外国人居住者で占められています。
低い税率や高度な教育システム、安定した社会インフラなどによる魅力的な国造りと、これを支える民族融和政策により多国籍国家を実現してきましたが、シンガポール人等(シンガポール国民及び永住権保持者)の雇用機会が減少したとして、全ての雇用主に対してシンガポール国民等の雇用を奨励しています。
そういった状況を受けて、シンガポール人の雇用機会を確保し、外国人に偏らない公平な採用を促進するため、シンガポール人材開発省(MOM)は従来、Fair Consideration Framework(FCF)の一環として「ウォッチリスト(FCF Watchlist)」を運用していました。
ただし、このウォッチリストは2023年から新たに採用されたCOMPASS制度に伴い、廃止されています。
ウォッチリスト(FCF Watchlist)とは
ウォッチリストは2016年に導入された制度で、以下のように、特定国籍の従業員への偏りが大きい企業や、外国人PMET(Professionals, Managers, Executives and Technicians)への依存度が高い企業などをMOMが特定し、採用方針や人員構成の改善を求めるものでした。
- 全従業員に占めるシンガポール人等従業員数の割合
- シンガポール国民等の雇用率が低い場合は、人事面での改善努力がされているか
- シンガポールへの経済・社会的貢献度
ウォッチリストに挙げられた企業は、監督官庁から通知がされるとともに、新たなEP申請の審査期間の長期化(3か月以上)、今後の改善策の提出、監督官庁による指導などの不利益を被ることがありました。MOMによると、2016年から2023年までに約1,000社がウォッチリストの対象となり、ウォッチリストの対象企業については、外国人雇用に関する審査がより厳格に行われるなど、日系企業でも、日本人の採用に影響が生じることがありました。
ウォッチリストは2023年に廃止
2016年から2023年まで、外国人採用の大きな影響のあったウォッチリストですが、Employment Pass(EP)の新しい審査制度であるCOMPASS(Complementarity Assessment Framework)が導入されたことに伴い、2023年に廃止されました。
従来、企業それぞれの状況に応じて個別に確認していた人員構成に関する考え方は、COMPASSの企業評価項目に組み込まれるという形で代替されています。
代表的なものが、
・C3 Diversity(国籍の多様性)
・C4 Support for Local Employment(ローカル人材の雇用)
です。
そのため、現在は「ウォッチリストに入るかどうか」を検討するのではなく、EP申請時にCOMPASS上で企業の外国人・ローカル人材の構成がどのように評価されるかを確認することが重要といえます。したがって、従業員数が多くない零細企業の場合は実質的にウォッチリストの懸念がほぼ無くなったといえるでしょう。
FCF自体が廃止されたわけではない
注意が必要なのは、廃止されたのはウォッチリスト(MOMが問題があると考える企業リスト)であって、Fair Consideration Framework(FCF)の考え方自体ではないことでしょう。
現在も一定のEmployment PassやS Passを申請する場合、原則として事前にMyCareersFutureへ求人広告を掲載(掲載免除あり)し、シンガポール人・永住権保持者を含む候補者を公平に検討することが求められています。
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したがって、外国人を採用する企業は、COMPASSの点数だけでなく、ローカル人材を含めた公平な採用プロセスについても引き続き注意する必要があります。
※本ページで解説している「FCF Watchlist」は2023年に廃止された旧制度です。現在のEmployment Pass申請については、COMPASSおよびFCFの最新ルールをご確認ください。