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COMPASS(Complementarity Assessment Framework)の概要

最終更新日:2023年4月5日

 

公認会計士  萱場 玄

   

     

  

2023年9月1日より、新規でEP(Empoyment Pass)を申請する際、最低給与基準の充足に加えて、ポイント制の諸条件をクリアする必要があることとなりました。このポイント制による新たなEP申請の制度をCOMPASS制度(Complementarity Assessment Framework)といいます。

概要

COMPASS制度施行後、EPを申請するには、そのEP申請する本人の個人属性と、雇用主である会社等の企業属性の2つの属性での評価獲得点数で合計40点以上を取得しなければなりません。ただし、以下の場合はEPであってもCOMPASS制度の対象外とされています。

  • 月額固定給が22,500ドル以上のEP申請
  • 事前のローカル募集義務が免除される本社からの海外駐在スキーム(ITC: overseas intra-corporate transferee)にてEP申請する場合
  • 1か月等、短期でのEPでの勤務の場合

  

COMPASSの全体図は以下の通りです。

上記の全ての獲得点数を合計して40点以上がEP申請に必要とされています。

個人属性

以下は個人属性のC1、C2の概要となります。

 

個人属性のC1:給与

給与が高ければ高いほど個人属性において加点要素となります。具体的には、同業界&同年代のローカルのPMET人材(professionals, managers, executives and technicians)の給与分布の中で、90%以上(給与が高い)の上位に位置する給与水準の場合は20点、65%以上90%未満の場合は10点、65%未満の場合は0点、となります。この業界&年代別の給与水準ベンチマークは毎年3月に更新、公表され、その年の9月1日以降のEP申請の基準として使用することとされています。

参考:2023年9月1日から適用される業界&年代別の給与水準ベンチマーク

 

個人属性のC2:学歴/専門資格

学歴が高ければ高いほど個人属性において加点要素になります。具体的には、トップティア教育機関(Top-tier institutions)の卒業資格を有する者は20点、一般的な大卒等(Degree-equivalent qualifications)の場合は10点、そうでない場合は0点、となります。

トップティア教育機関(Top-tier institutions)とは、QS世界大学ランキングの上位100位の大学やその他評価の高いアジアの大学、シンガポール国内の大学、その他の評価の高い教育機関をいい、具体的にトップティア教育機関リストとして公表されています。日本からは東京大学、京都大学、東京工業大学、大阪大学、東北大学の5校のみが選出されています。

一般的な大卒等(Degree-equivalent qualifications)とは、一般的に英国の教育制度における学士号と同等と評価される卒業資格や、業界で十分に認知された専門機関で承認された専門資格をいいますが、現時点で詳細は明らかにされていません。

企業属性

以下は、企業属性のC3、C4の概要となりますが、企業属性を理解する上で重要な概念がPMETの概念です。上述のとおり、PMETとは一般的にその職種であるProfessionals, Managers, Executives and Techniciansの略称として使用されますが、COMPASSの企業属性の判定におけるPMETとは、その職種ではなく、「月額固定給3,000ドル以上の従業員」を指します。外国人の場合はEP等の申請で3,000ドル以上の月額固定給で申請した就労許可を持つ外国人をいい、ローカル(シンガポール人と永住権保持者の外国人をいいます。以下同様)の場合はCPF申告の実額に基づきます。通常のPMET概念とCOMPASSの企業属性の判定上のPMET概念を区別するため、ここでは後者を「3,000ドルPMET」と呼ぶことにします。

企業属性のC3:PMET国籍の多様性

3,000ドルPMETの国籍が多様であればあるほど企業属性において加点要素となります。具体的には、企業全体の3,000ドルPMETの人数に対して、EP申請しようとしているその外国人の国籍の3,000ドルPMETの人数が何%か、言い換えると、3,000ドルPMETが日本など一つの国籍に偏っていないか、という基準となります。同一国籍への偏りが5%未満の場合は20点、5%以上25%未満の場合は10点、25%以上の場合は0点となります。

このPMET国籍比率は、あくまでパスポート上の国籍での判断となり、日本人の永住権保持者も日本国籍の比率を構成することになる点は注意点といえます。

企業属性のC4:ローカルPMET採用率

その企業が雇用している3,000ドルPMETにシンガポール人等の人数が多ければ多いほど企業属性において加点要素となります。具体的には、その企業が属する業界のPMET採用率の分布図において、その企業の3,000ドルPMET採用率が50%以上であれば20点、20%以上50%未満であれば10点、20%未満であれば0点、となります。

なお、その企業が属する業界は、ACRA登録上の主要事業内容にて判定されます。

 

加点評価

個人属性の加点評価C5:不足専門職

上述の個人属性のC1、C2とは別に、加点評価として、シンガポール政府が認定した不足職業リスト(SOL: Shortage Occupation List)に掲載されている職種の場合は個人属性として20点が追加されます。ただし、C3の3,000ドルPMETの国籍の偏りが3分の1(≒33.3%)以上の場合は加点は10点に下げられることになります。

不足職業リストには、バイオ科学者、エコ関連の専門家、富裕層向けの金融アドバイザー、看護師、ITの専門家(ソフトウェアやアプリの開発、データサイエンティスト、AI、サイバーセキュリティ等)、海運系といったように、これまでのEPの審査の結果からも予想されていた優遇職が散見されます。なお、IT関連職については最長で5年のEP有効期限が認められます。

参考:不足職業リスト(SOL: Shortage Occupation List)

企業属性の加点評価C6:政府認定誘致企業

雇用企業が意欲的な投資、イノベーティブもしくは国際的な事業活動を行っているとしてEDB (Economic Development Board)、ESG (Enterprise Singapore)やNTUC(National Trades Union Congress)に認定された企業は、企業属性として10点、加点されます。

参照:加点対象となる認定プログラム

中小企業の企業属性(C3、C4)の免除

企業属性のC3、C4について、3,000ドルPMETの人数が25人未満(24人以下)の中小企業において、それぞれ10点が自動付与されます。よって、中小企業においては企業属性で合計20点獲得、個人属性で20点必要、ということになります。

補足:企業属性の更新タイミングについて

企業属性の判定において、3,000ドルPMETの人数、PMET国籍多様性、ローカルPMET採用率は極めて重要ですが、EP発行やEPキャンセル、ローカル雇用数や賞与の有無など、様々な要因で変動する可能性があります。これらの更新タイミングは毎月6日とされ、4か月前、3か月前、2か月前のCPF情報(例:4月6日の更新では1月、2月、3月のCPFデータ)が反映されることになります。

 

(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。

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