物価差があるということはどういうことか
2015.10.07
その他(日々のニュースや日常)
毎度のことながらシンガポールの物価の高さには悩まされます。いかに低税率の国であろうと、物価の高さで帳消し、むしろマイナスになる事業や個人のお財布事情というのはシンガポールあるあるですが、日本に比べて何故こんなにも物価差があるんでしょうか。
為替相場によるので時期による、確かにそれもあるでしょう。
関税、酒税がかかるので日本の物を消費するならそりゃ高くつきまっせ、、、ですね。それもあるでしょう。
不動産の賃料が高いから価格に乗っている、うん、それも確かに大きいですね。
しかし日本との違いで一番大きいのは、
「日本はブラック労働に支えられている!」
「長時間労働に麻痺しているサラリーマンに支えられている!」
これだと思うんです。
思えば、10年以上続いたデフレ経済により、日本のモノ・サービスは長期に渡り値下がりを続け、社員の昇給も雀の涙ほどの割合の中、いかに安く価値の高いモノ・サービスを提供するかに腐心してきました。一方でモノ・サービスを提供する企業側では、社員は朝9時ちょうどに出社し、定刻の18時になっても帰宅せず、21時に帰宅するぐらいが普通の労働環境です。
家賃を浮かすためにオフィスから1時間以上離れた郊外から通勤している人も多いでしょう。私も日本で働いていた時は「基本終電」だったので、21時みたいな早い時間に帰ることは何かの記念日ぐらいしかありませんでした。
しかしこれって、世界では結構特殊な部類に入ると思います。
シンガポールでは、朝の遅刻も結構普通ですし、夕方の定刻前に帰るフライング社員もちょこちょこいます。お客様への納入期限が今日だといって出来ていなくても定刻になったら帰宅してしまう社員も大勢いますし、連休の前後の平日には何故か体調を壊し、与えられた「有給病欠」の権利行使が多発します。日系企業なので日本式の労働環境を強いると社員は辞め、労働市場へのアクセスが難しくなります。
それでいてシンガポールの物価は、消費者物価指数などの難しい指標を無視した感覚値だと、ものによりますが日本の物価の1.5倍~2倍、給与水準は日本と同じか、若干高いです。モノ・サービスのクオリティはいわずもがな。
シンガポールやその他海外の生活に慣れて日本に一時帰国すると、「ええー!この定食が800円!美味っ!安っ!やっぱ日本最高!」みたいなことが頻発しますが、日本の定食屋は、風邪を引いても店が大変だったら休みませんし、朝早くから仕込みをして、家族の待つ家に帰るのは深夜になり、それでいて(他の先進国に比べて)低賃金です。定食屋はあくまで例で、オフィスワークでも似たような状況です。
給与水準だけを比べると日本とシンガポールではあまり変わりがありませんが、同じ給与で一日12時間働く日本人と、一日7時間のシンガポール人。月に1回は休日出勤する日本人と1年に1回ぐらいしか休日出勤の無いシンガポール人。。
こういった労働環境の違いによる物価差だと思うんです。
どっちの国が良いかは、過酷な労働環境ながら消費者として良いサービスを受けたいか、ゆるい労働環境ながら消費者として良くないサービスで満足するか、選択肢なんだと思います。
何が言いたいかはよく分かりませんが、安くて良いものはつまり、その背後にある労働者への圧迫がこれを支えているわけで、一概に両手を上げて日本最高、と言うにはちと声が小さくなるわけです。