日星(日本・シンガポール)租税条約
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
日星租税条約(=日本・シンガポール租税条約)は、 正式には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の条約」といい、日本とシンガポールが所得に対する税金(所得税や法人税など)について合意したものです。
租税条約の究極目的は両国の経済活動の促進ですが、実務上の主要な役割の一つ、「二重課税の排除」に関して、以下のように規定されています。
(1) 配当に関する源泉税率(第10条)
配当の支払日まで6ケ月間&議決権株式25%以上を保有する場合の配当にかかる源泉税率の上限は5%、その他の配当にかかる源泉税率の上限は15%とされています。
ただし、シンガポール法人から日本法人に支払う配当は、シンガポール国内税法で課税対象外とされていますので基本的に源泉税は課税されません。
(2) 利子に関する源泉税率(第11条)
一定の場合を除き、利子の支払いにかかる源泉税率の上限は10%とされています。
(3) 使用料・ロイヤルティに関する源泉税率(第12条)
一定の場合を除き、使用料・ロイヤルティの支払いにかかる源泉税率の上限は10%とされています。
(4) 短期滞在者の給与.報酬(第15条)
日本の居住者がシンガポールで提供した給与所得(ただし取締役・芸能人等の報酬は除く)は以下を条件としてシンガポールでは課税されないこととされています。
- シンガポール滞在が継続するいかなる12ケ月の期間においても合計183日を超えないこと
- その所得が日本の雇用者またはこれに代わる者(≒日本法人)から支払われていること
- その所得がシンガポールの恒久的施設(≒日本法人のシンガポール支店など)等によって負担されていないこと
つまり,出張中の給与などが日本の親会社において支払われ,かつその給与等がシンガポールの支店などへ付替えられていなければ,(人件費をシンガポールで損金計上していないため、個人の所得税を免税としても問題がないため)シンガポールでの給与所得は免税となります。
(5) 退職年金(第18条)
受給者の居住地のみで課税されることとされています。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。