株主テスト(税務上の欠損金の繰越要件)
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
シンガポールで法人税法上の欠損金を繰り越すためには、重要な株主構成が実質的に変動してはいけないとされ、そうでない限りは一定の場合を除き無期限に欠損金を繰り越すことが可能です。「重要な株主構成が実質的に変動していないか」を判定することを株主テスト(Shareholders Test)と呼び、以下のような方法で判定を行います。
考え方
以下のステップで判定を行います。
- 二つの判定日(Relevant Dates)を特定
- 二つの判定日における株主を特定
- 二つの判定日の株主の持ち株数を特定
- 二つの判定日における株主の持ち株比率を特定
- 共通株主(二つの判定日でどちらも株主である株主)の持ち株比率を合計し、二つの判定日における共通株主の持ち株比率の合計が両日ともに50%以上の場合は「重要な株主構成が実質的に変動していない」とする
二つの判定日
二つの判定日はそれぞれ下記のように定められています。
判定日① 税務上の欠損金が発生した課税期間の決算日が属する暦年の最終日(12月31日)
判定日② 税務上の欠損金によって控除したい所得が発生した賦課課税年度(YA)の初日(1月1日)
例えば、2011年9月期(2010年10月1日~2011年9月30日)という課税期間で発生した税務上の欠損金を2018年9月期決算(2017年10月1日~2018年9月30日)の所得から控除したい場合は以下が二つの判定日となります。
判定日① 2011年12月31日(2011年の最後の日)
判定日② 2019年1月1日(YA2019の初日)
株主構成の比較
二つの判定日の特定の後、二つの判定日における株主構成を比較して変動の有無を判定します。
まず、共通株主、つまり「二つの判定日でどちらも株主である株主」を特定し、両日の共通株主の持ち株比率を合計して両日ともに50%以上である場合「変動なし」、両方もしくはどちらかの判定日において50%未満となる場合は「変動あり」とされます。
具体例
- 変動なしの例
例えば判定日①の株主の持ち株比率が、A氏:15% B氏:45% C氏:40%、判定日②の株主の持ち株比率がA氏:10% C氏:40% D氏:50%、であるとします。
この場合、判定日①と②の共通株主であるA氏とC氏の持ち株比率を合計すると、①55%、②50%となり、二つの判定日の共通株主の持ち株比率合計が50%以上であるため「変動なし」、つまり①の判定基礎となった課税期間の欠損を②の判定基礎となった課税期間の所得から控除できる、ということになります。
- 変動ありの例
一方、例えば判定日①の株主の持ち株比率が、A氏:30% B氏:30% C氏:が40%、判定日②の株主の持ち株比率がA氏:30% B氏:10% D氏:60%、であるとします。
この場合、判定日①と②の共通株主であるA氏とB氏の持ち株比率を合計すると、①60%、②40%となり、判定日②における共通株主の持ち株比率合計が50%未満となるため「変動あり」、つまり①の判定基礎となった課税期間の欠損は②の判定基礎となった課税期間の所得から控除できない、ということになります。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。