シンガポールと日本の会計基準差異
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
シンガポールの会計基準はIFRSに準拠しているため、日本の会計基準との差異は日本会計基準と国際会計基準の差異になります。
のれん(Goodwill)
日本ではのれん(Goodwill)の計上後20年以内の期間にわたって償却します。その後減損の兆候がある場合に減損テストを行う必要があります。
一方、シンガポールではのれんの償却は行わず、毎年1回同時期に減損テストを行います。
研究開発費(Research&Development)
日本では研究費、開発費ともに研究開発費として発生時に費用処理とされますが、シンガポールにおいては研究費(Research)は発生時に費用処理、開発費(Development)は以下の6要件を満たす場合は無形資産となり、償却することになります。
- 技術的に実現が可能
- 無形資産を完成させ、使用する意図がある
- 無形資産を使用、または売却する能力がある
- 無形資産が将来の経済的便益を創出する見込みがある
- 開発を完成させるための技術上、財務上およびその他の資源が十分確保されている
- 無形資産に起因する支出を信頼性を持って測定する能力がある
投資不動産(Investment Property)
日本では投資不動産の時価評価および再評価は認められていませんが、シンガポールでは投資不動産について、通常の固定資産と同様に減価償却を行うほか、時価評価を行うことも可能です。また、固定資産は再評価することが認められています。
機能通貨(Functional Currency)
日本では機能通貨という概念はなく円以外の通貨を外貨としますが、シンガポールでは営業等の経済活動を行う主たる通貨を機能通貨とし、販売や仕入れ取引等の測定を機能通貨で行い、機能通貨以外の通貨を外貨として扱います。
減価償却(Depreciation)
日本では、損金経理(会計で費用計上している金額を上限に税務上の損金を認めるという法人税の制度)という概念が存在するため、会計と法人税が密接に関係しますが、シンガポールでは損金経理という概念がなく、会計と法人税は完全に分離されています。したがって、会計上の減価償却費としては一般的な基準が存在せず、会社が合理的に減価償却の方法や耐用年数を決定して算定する必要があります。
減損損失の戻入れ
日本では減損損失の戻入れは認められていませんが、シンガポールでは、のれん以外の資産は過年度に計上された減損損失について、一定の要件と制限のもとで戻入を行う場合があります。ただし、戻入れ後の帳簿価格は、対象となる資産が減損損失を認識していなかった場合の帳簿価格を超えてはいけません。
経常損益、特別損益
シンガポールのいわゆる損益計算書には、経常損益、特別損益という項目がありません。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。