Sパス申請枠(Quota)の計算方法
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
新卒社会人等、中技能外国人向けの労働許可証ともいわれるSパスは、最低月額給与がEPよりも低く、人件費を抑えて外国人を雇用するためには利便性の高い制度といえますが、Sパスの申請にあたっては、一定の計算方法に基づき、複数人のシンガポール人等の雇用実績がなければなりません。
Sパスの「枠(Quota)」とも呼ばれるこの人数制限制度、実際には「Sパスホルダーの雇用1名あたりのシンガポール人等の雇用数」ではなく、「Sパスの人数割合は全従業員数(Total Workforce)の一定割合以下」と定められています。
(1) Sパス申請手続き
はじめてSパスを申請する会社等は、まず当局(CPF Board)からCPF申告番号(CSN: CPF Submission Number)を取得し、シンガポール人等の雇用実績として初回のCPF申告納付を行わなければなりません。その後、当局(MOM)へ業種の登録(SSIC Codeから選択)を行うことで、その後のSパス枠の算定基礎となります。
なお、新規事業等により既存の業種と異なる業種でSパスを申請する場合は別途CPF申告番号(second CPF account)を取得する必要があります。
(2) 全従業員数(Total Workforce)に占めるSパスホルダーの人数割合
サービス業:15%
その他の業種:20%
(3) 全従業員数(Total Workforce)の定義
全従業員数(Total Workforce)は、シンガポール人等(シンガポール人、永住権を保有している外国人)、Sパスホルダー、Work Permitホルダーの合計人数とされます。つまり、EPやLOCなどの人数はここに含まれません。
なお、シンガポール人等の数は前月までの3か月のCPF申告従業員数の平均によることとされています。
(4) シンガポール人等の雇用数
「枠」の計算が「全従業員数(Total Workforce)の一定割合以下」で算定される以上、「従業員数」にカウントされるのはどの従業員か、というのが重要になりますが、以下のように定められています。
- 月額給与SGD600未満:従業員数にカウントされません
- 月額給与SGD600以上SGD1,200未満:パートタイム従業員としてカウントされ、「枠」の計算上はパートタイム従業員2名で従業員1名としてカウントされます。
- 月額給与SGD1,200以上:「枠」の計算上、1名としてカウントされます。
なお、3社以上からCPF申告納付の受給を受けている従業員は「枠」の計算上、従業員にカウントされませんので注意が必要です。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。