GSTの課税範囲
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
GST登録企業は、受け取ったGST(Output tax)から支払ったGST(Input tax)を控除し純額を納税することになりますが、下記の通り、取引の内容によりGSTの取り扱いが異なります。
原則的取り扱い
原則として、下記の取引にGSTが課税されます。
- GST登録企業がシンガポール国内で事業として販売した資産及び提供したサービス
- シンガポールに輸入された資産(GST登録企業か否かは問わない)
- サービスの輸入(GST登録企業か否かは問わない)
資産の譲渡及びサービス提供の場所の判定について、GSTはGoods and Services Taxの略とされますが、日本の消費税と同様に「消費した地」によって場所の判定を行います(法人税の所得の源泉地と異なることがあります)。
つまり、資産の譲渡であれば、その資産の出荷場所と引き渡し場所のどちらかがシンガポールであればGSTの課税対象とされ、サービスであれば一般的にはサービスの提供者の所在地で判定されます。
輸出免税(Zero-rated Supplies)
上記の通り、資産の譲渡であれサービスの提供であれ、シンガポール法人等が行う販売やサービスは基本的にGSTの課税対象となりますが、海外向けの販売やサービスはゼロ%課税(課税されるものの税率が0%)とされます。
名称こそ「輸出」とされますが、資産の輸出(Exporting of Goods)のみでなく、旅客・物流、シンガポール国外の特定の資産に関連するサービス、国外で配信するメディア広告、国外実施イベント、国外顧客へのコンピューターサーバー提供などのサービスの輸出(International Services)もここに含まれ、ゼロ%課税とされます。
非課税取引(Exempt Supplies)
原則的には課税取引であるものの、以下の取引については政策的配慮等により課税されないこととされています。ただし、これらの取引は申告する必要があります。
- 財務活動に関する一定の取引
銀行口座に関する銀行手数料、為替換算手数料、クレジットカード手数料、有価証券やビジネストラスト受益権、イスラム債等の発行や譲渡取引、信用貸付や分割支払い手数料などは非課税取引とされますが、例えば保険の仲介手数料等のブローカー報酬やアドバイス報酬は課税対象とされています。
- 居住用不動産の売買および貸付
居住用の土地や居住用物件の譲渡及び賃貸料は非課税取引とされますが、物件と共に貸し出される家具等の賃料や物件の仲介料、アドバイス報酬等はGSTの課税対象とされています。
- 投資適格金および貴金属の輸入および国内取引
金や銀、プラチナなど、市場価格が存在し流動性の高い貴金属は金融商品に似た性質であるとして非課税取引とされています。
課税対象外(Out-of-scope Supplies)
シンガポール法人が取引当事者であっても、第三国間取引(例えばシンガポール法人が中国から部品を購入し日本へ販売するものの、シンガポールを経由せずに中国から日本へ直接送られる取引)については課税対象外とされ、GST申告に含める必要もありません。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。