機能通貨(Functional Currency)
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
機能通貨(Functional Currency)とは,事業活動上の主要な通貨をいい、会計上、この機能通貨を基礎として会計処理を行う必要があります。機能通貨以外の通貨を外貨取引として処理するため、会計処理上は重要な決定事項です。シンガポールは日本と異なり、日常的に多様な通貨で取引が行われるため、法定通貨であるシンガポールドル以外の通貨を機能通貨とすることもごく一般的です。
(1) 機能通貨の決定
事業上の主要な通貨である機能通貨は以下のような点を考慮して決定されます。
- 物品やサービスの販売価格に重要な影響を有する通貨(どの通貨建てで請求し、どの通貨で回収するか)
- 製商品やサービスの販売価格が国の競争力等に大きく依存している場合はその国の法定通貨
- 原価、経費等、主要なコストに影響する通貨(どの通貨建てで請求され、どの通貨で支払うか)
また,上記の要素だけで決定が難しいような場合は,以下の要素も考慮すべきとされます。
- 財務活動において使用される主要な通貨
- 取引通貨として通常保有される通貨
(2) 機能通貨による経理処理及び決算
機能通貨以外の通貨での取引が発生する場合、一般的に以下のいずれかによって会計処理を行います。
(i) 取引の都度、機能通貨で処理する
→会計システム上、機能通貨を設定し、機能通貨以外の通貨で取引した場合も機能通貨に都度引き直して会計処理を 行う方法です。多通貨会計に対応している会計ソフトで処理する場合、通常は機能通貨以外の通貨で入力すると自動で機能通貨での記録がされることになります。
(ii)取引ごとはそれぞれの通貨で処理し、期末に機能通貨に再測定(Re-measurement)を行う
→都度都度の取引を機能通貨で処理できないような場合,日々の取引記録はそれぞれの通貨で帳簿記録を行い,期末に機能通貨に再測定を行う方法です。
機能通貨については、長期的に同一の通貨によることが望ましいこと、経営者の主張に依る部分も多いこと、法人税の計算上はシンガポールドルによることなどから、多角的な視点で決定することが求められるといえます。
注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。