EP (Employment Pass)の概要
公認会計士 萱場 玄
最終更新日:2023年4月5日
働くことを目的にシンガポールに滞在している日本人は多くはこのEP(Employment Pass)によって滞在と労働の許可を得ています。
(1) 申請要件
EPを申請することができるのは下記の全てを満たす外国人とされています。
- シンガポール国内でマネジメントレベルや専門職である職(内定)を得ること
- 月額基本給がSGD 5,000以上であること
- 資格や学歴、専門スキルなどを十分に備えていること
- 2023年9月1日以降はCOMPASS (Complementarity Assessment Framework)の基準をクリアすること
(2) 申請手続き
EP申請は、雇用主である会社等もしくは人材紹介業ライセンスを有する業者により行いますが、内定を得た「特定の職」に就くことについて個別に申請、審査が行われるため、まずは職を見つけ、雇用主である会社等と合意してからの申請となります。
申請時にSGD105、承認後の発行手続きにSGD255 (IssueにSGD225+日本人の場合はMultiple Journey visaにSGD30)を当局(MOM)に支払います。
(3) 当局による審査
審査は通常、3週間程度(オンラインでない紙での申請の場合は8週間)とされていますが、2022年後期以降、監督官庁MOMが審査期間の短縮を公表し、現在は1週間程度で審査結果が通知されるのが一般的です。ただし、まれに長期化(2-3か月)することもあり、余裕をもった事業計画が必要になります。
なお、審査は年齢、学歴、専門性、職歴、月額給与といった外国人本人の属性のみならず、財務状況、ローカル雇用の状況、納税状況や売上規模、事業内容といった雇用主である会社の属性によっても結果が異なります。さらには職歴と雇用主である会社等の事業内容との整合性や、過去の申請更新状況、申請タイミングやその他の同民族や同国籍のEP発給状況、そして当局の内部事情によっても異なるといわれ、不確定要素、対策不可能要素も多いといえます。
2023年9月1日以降、COMPASS制度の導入が予定されていますが、これまで不明確であった審査過程が少し明確化されたもので、実質的な審査内容にはそれほど大きな変更がないといえます。
(4) 有効期間
EPの有効期間は、審査を経て当局(MOM)が決定することになりますが、新規申請の場合は(発行日から)1年間もしくは2年間、更新の場合は(更新前のEP有効期限から)3年間の期限が最も一般的といえます。
(5) 扶養家族の滞在ビザ
月額給与がSGD6,000㌦以上のEPホルダーは、以下の条件で扶養家族の滞在許可(DPやLTVP)を申請することが可能です。ただし、シンガポール子会社への出向専用のEP申請方法(overseas ICT)でのEP取得の場合はDP申請することができません。
DP:21歳未満の未婚の子供、養子、配偶者
LTVP:事実婚の配偶者、ハンディキャップを持つ21歳未満の未婚の子供、21歳未満の未婚の継子
なお、月額給与SGD12,000以上のEPホルダーは両親に対してLTVPを申請することが可能です。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。