暗号資産(仮想通貨)及びICOの法人税&所得税の取扱い
公認会計士・税理士 萱場 玄
暗号資産(仮想通貨)については、暗号資産をデジタルトークン(DT)と定義し、DTをさらに以下の3種類に分類して取り扱いが定められています。
ペイメントトークン(PT)
BTCやETHなどが代表例で、支払い手段として用いられるDTを指します。支払い手段としてのPTは無形資産であり、当該PTを使用した取引は財やサービスとの物々交換としてみなされます。また、PTの価格は取引時の時価(合理的で観測可能な価格を継続適用)で測定されます。
ユーティリティ トークン(UT)
主に財やサービスを受ける権利を示すDTをいいます。その多くは授受の時点では課税対象外であり、財やサービスに対する前払費用や前受収益として扱うこととされています。
セキュリティートークン(ST)
事業体への投資(出資や投資と同様)を行うためのDTを指します。債券や株式と同様に、その性質によって課税の取り扱いが異なります。
ICO(Initial Coin Offering)の取扱い
PTのICO
原則として発行時点で課税されます。ただし、PTのICOはあまり一般的ではなく、ケースバイケースでの判断とされています。所得の源泉地は主に以下の4つを考慮して決定されます。
・シンガポールに会社の物理的実体があるか否か
・ICOのマーケティングをどこでどのように行ったか
・ICO投資家の居住地が主にシンガポールであるか否か
・ブロックチェーンの開発者の事業場所がシンガポールであるか否か
UTのICO
UTのICOは将来の財やサービスを受ける権利を示すものであり、レベニューネイチャーのため課税対象とされ、ICO時点では課税されませんが財やサービスの提供時に課税されることとなります。所得の源泉地の決定はPTと同様、4つの要素を考慮して決定されます。
STのICO
STは所有権や議決権などを示すものであり、債券発行や新株発行と同様、キャピタルネイチャーのため非課税とされています。その他(配当や利息)の税務上の取扱いも通常の債券や株式と同様とされ、源泉税の対象にもなります。
その他
マイニング報酬について
マイニング報酬として得たPTへの課税の有無は、「利益を得る意図があったかどうか」によって判断されます。趣味としてマイニングを行っている場合や長期投資としてマイニングで得たPTを保有している場合には、売却時にも非課税とされます。個人で得たマイニング報酬は趣味と推定され原則として課税されませんが、法人で稼得したマイニング報酬は利益を得る目的であると看做され、売却時に課税されることとなります。
エアドロップでPTを得た場合の所得税の取り扱い
エアドロップによりPTを無償で得た場合、原則として課税対象外とされますが、サービスの見返りとしてエアドロップによりPTを得た場合などは課税対象となります。
創業者付与DTの所得税の取り扱い
DT発行時の創業者への付与分については、創業者の英金提供の対価であれば所得税課税、そうでない場合は課税対象外となることもあるとされています。ロックアップ(売却禁止期間)が設定されている場合は、ロックアップ終了時点で当該ロックアップ終了時点の時価での課税とされています。
記録保持
通常の法定通貨での取引と同様、取引日、取引金額(DT枚数と時価)、機能通貨との換算レート、取引の目的、取引相手、根拠資料などの詳細を記録、保管する必要があります。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。