税務上の減価償却費(Capital Allowance)
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
シンガポールでは、大原則として、会計上の減価償却費は損金算入できません。資本への投資は損金にならないためです。
しかし、政策的配慮により、一部、税務上の減価償却(CA:Capital Allowance)が認められています。シンガポールの税務上の減価償却費は基本的に機械設備・器具備品(Plant and Machinery)のみに認められます。具体的には、エアコン、カーテン、ビルの制御装置、据え付け型ストレージ、カーペット、ドアセキュリティシステム、エスカレーター、家具、製造機械、エレベーター、バンなどの物流用車両、オフィス家具(PCやプリンターなど)、パーティション、看板、ウェブサイトの初期開発費用など。逆に認められないのは、ドア(自動ドア含む)、一般的な照明機器、階段、Sナンバーの車両など、となります。
償却方法については下記のようにいくつか定められています。
普通償却
初年度に20%(月割りはしない)償却し、あとは耐用年数に従って一定率を定率法で償却していくものです。償却年数は資産により、5年から16年と規定されています。
加速度償却
一般的に、損金を前取りできるため、基本的には上記の普通償却ではなくこちらの加速度償却を採ります。シンガポールでは、基本的に全ての機械設備・器具備品で毎年、取得原価の3分の1ずつ償却することが可能です。なお、パソコンなど一定の固定資産や、5,000㌦未満の少額資産(のうち一定のもの)は取得年度に全額償却可能です。
その他、リノベーション費用や無形資産の償却などは、Capital Allowanceの概念とは異なる概念で税務上の費用とされます。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。