シンガポール移住した年の所得税の取り扱い
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
年の途中で日本からシンガポールに移住(起業家や富裕層の移住、日系シンガポール進出企業の駐在員や現地採用など含む)する場合、つまり税務上の居住国が日本からシンガポールに変わる場合、下記の通り、同一の暦年であっても移住前の期間と移住後の期間で所得税の取り扱いが分かれることになります。
移住前の期間(日本居住者であった期間)
移住前の期間、つまり日本居住者であった期間については、その年の1月1日から日本出国日までの間に得た所得は原則として日本で所得税課税されることになります。申告の方法は、通常の年末調整と同様の手続きを行うケースと確定申告が必要なケースがあります。
確定申告が必要なケースでは、納税管理人の選任・届け出が必要となりますが、納税管理人を選任・届け出しない場合は出国までに一旦、準確定申告を行う必要があります。
住民税は、翌年の1月1日に日本国内に住所を有する個人に対して課されます。例えば、2018年途中に日本からシンガポールへ移住した場合の(日本で課税される)出国前の期間の所得については、2019年1月1日に日本国内に住所がある場合に課税されるということになりますので、この場合の2018年の出国前の所得について住民税は課税されないということになります。
移住後の期間(シンガポール居住者、日本非居住者となった後の期間)
移住後の期間、つまりシンガポール居住者であり日本の非居住者となった後の期間については、一定の所得(日本の物件から得た不動産所得など)を除きシンガポールでのみ課税されることになります。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。