法人の居住性(居住法人と非居住法人)
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
課税関係、特に国際税務を考える際に重要な概念が「居住性」です。個人の所得税を考える上では注目されることが多いのですが、実は法人にも居住性の概念があります。国際税務を考える上で重要な基礎概念ではありますが、あまり知られていませんのでシンガポール税法における「法人の」居住性について紹介していきます。
シンガポールは税制上、居住者を優遇しています。つまり、優遇措置をもって法人の税務上の居住性をシンガポールに誘導・誘致しているともいえますが、一般的には居住法人は非居住法人より税務上有利に取り扱われます。したがって、居住法人とされるのが限定的、居住法人とされない法人は非居住法人とされる、というのが本来の考え方です。
居住法人・非居住法人の区別
居住者の判定は各賦課年度ごとでなされますが、では、居住法人とはどういった法人をいうのでしょうか。
シンガボールでは,管理と支配がどこでされているか?という基準で判定がされます。言い換えると、シンガポールで法人が設立されたか否かではなく、管理と支配がシンガポールでなされている法人のみがシンガポール居住法人とされ、それ以外の法人は非居住法人とされます。
あくまで総合判定(それのみではなく、その他のあらゆる事象・状況を鑑みて判断)ではあるものの、経営上の重要な意思決定がシンガポールでなされているか、具体的には、経営上の重要な意思決定をするための取締役会がシンガポールで開催されているかどうかという点が重要な判断基準とされています。 したがって、本店所在地(日本法人であれば日本)で取締役会が開催されるのが通常である日本法人のシンガポール支店や、日本在住の富裕層の資産管理会社的なシンガポール法人は一般的には非居住法人という取り扱いになります。
居住法人・非居住法人の差異
では、居住法人となるか非居住法人となるかでどのような違いがあるでしょうか。主要な差異は以下になります。
- 非居住法人は、いわゆる租税条約の恩典(源泉税の軽減など)を受けられません
- 非居住法人は、いわゆる国外源泉所得免税(日本からの配当免税など)が適用できません
- 非居住法人は、いわゆるスタートアップ免税が適用できません
上記のような税務上の優遇措置はシンガポール居住法人でなければ受けられないため、一般的には居住法人となるほうが税務上有利となります。
なお、必要な場合、法人の居住地証明(COR:Certificate of Residence)を監督官庁より取り寄せることが可能です。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。