マネージングダイレクター(Managing Director)とは
公認会計士 萱場 玄
公認会計士 寺澤 拓磨
大森 裕之
シンガポールでは、マネージングダイレクター(MD: Managing Director)という役職がよく用いられます。現地法人における最高責任者(社長)の役職とされることが多く、実務上はほとんど全てのケースで会社を代表する権限を有する役職ではありますが、実際には、そもそも設置自体が任意の単なる定款上の役職にすぎず、日本の代表取締役のように必ずしも会社を代表する権限を有しているとは限りません。また、定款上の役職に過ぎないため、法人の登記簿(ビズファイル)にManaging Directorとして登記する義務も、ビザ申請上の役職と合わせる義務も、その他のビジネス上の記載(名刺など)と合わせる義務も無いと実務上は解されています。
日本の代表取締役は、取締役会設置会社においては会社法上で設置が義務付けられており、原則として業務執行権限を有し会社を代表する権限を有します。
マネージングダイレクターの権限
上記の通り、マネージングダイレクターはそもそも定款上の役職であり、その権限の範囲も人数も定款によって定められます。ACRAから提供されているモデル定款では,取締役会がその構成員の中から1 名以上をマネージングダイレクターとして選任することができる旨を定めています。
日本の代表取締役は、取締役会決議や株主総会決議を要する一定の事項以外のすべてに対して、会社を代表する権限を有しますが、シンガポールのマネージングダイレクターの権限は、定款で定められた範囲、もしくは取締役会決議に基づいた範囲に留まる点で大きく異なるといえます。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。