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取締役(ダイレクター)の責任

公認会計士  萱場  玄

公認会計士  寺澤 拓磨

大森 裕之

 

 

 

取締役の責任

取締役は、その職務を遂行するにあたり、誠実に行動し相当の注意を払いながら業務執行を行う義務、といった会社法の責任と、一般法に基づいた信任義務があるとされます。具体的には、以下のような責任を負います。

 

・開示義務

取締役は取引上の利益を直接または間接的に享受する場合には、取締役会に対して当該利益の詳細を開示する義務があります。

なお、これらには、会社と取締役間で取引を行う場合や他社の取締役を兼任する場合等も含まれます。

 

・会社の利益のために誠実に行動する義務

取締役は会社の利益を第一に考え誠実に行動する義務を負っており、会社以外、例えば取締役個人や第三者の利益のために行動をすることは認められません。

 

・権限濫用と情報の不正使用を行わない義務

取締役は、たとえ会社の利益のために行動したという場合であっても、情報の不正使用や権限濫用等、不適切な方法で権限を行使した場合には責任を問われることとなります。

 

・利益相反を回避する義務

取締役は、会社と取締役との間で利益が相反するような行動を回避する義務があり、会社の同意を得ることなしに利益相反行為をすることは禁じられています。具体的には以下のような行為が挙げられます。

- 会社との取引(例:会社の財産の購入または財産の販売、会社から借入を受けることや保証の提供を受ける行為)

- 会社に代わって、取締役個人が取引先とビジネスを行う行為

- 他社の取締役との兼任

上記の行為を行う場合、会社は取締役会に対して利益相反取引の詳細を開示し会社の承認を得る必要がありますが、Exempt Private Companyでは例外的に取締役やその家族に対して会社の保証や融資を与える行為が認められています。

また、他社の取締役を兼任している場合には、全ての会社に対して、利益相反にあたる旨を就任後最初に開催される取締役会で開示する必要があるとされます。

 

・善管注意義務

取締役は善管注意義務を払うことが求められます。

善管注意義務とは、業務執行に当たり、取締役は常に誠実かつ合理的な注意を払って業務執行を行わなければならないとされる義務をいいます。

なお、善管注意義務の程度は、取締役個人が有するスキルや経験等によって異なり、例えばより高度な資格やスキルを保有する取締役は、より高いレベルの善管注意義務を負うことが期待されています。

 

・適正な決算を行う義務

取締役は、適時適切に決算書を作成し各種税務申告を行い、そのための記録を整理保存して適切に監査を受ける義務があります。

 

取締役の義務違反

取締役の義務違反によって会社が損害を被った場合は、会社は取締役に対しては原則として取り消すことができますが、第三者に対しては対抗できないことがあります。ただし、利益相反取引によって取締役が得た利益については、会社は自社に帰属させることができます。その他、取締役個人に罰金もしくは禁固に処せられることもあります。

また、定款や取締役と会社間の契約において、取締役の責任を軽減・免状する目的で特別な条項を設けたとしても、そのような条項は会社法上で無効とされます。大企業の場合、Directors & Officers Insuranceといった取締役の損害賠償保険に加入することによって、有事の損害賠償責任を軽減する措置をとることも一般的です。

また、違反行為があった場合には、会社法での違反かコモンロー上の違反かによって責任が異なります。会社法違反の場合には民事上の責任に加えて刑事責任が課されることがありますが、コモンロー上の義務違反の場合には民事責任にとどまるとされています。

 

 

(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。最新の実務情報はシンガポール入門~最新実務編(オンライン)~にて提供しております。

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